首都圏でも人材不足が続いている
日本最大の経済圏である関東地方には、IT、製造、物流、食品加工、介護、建設、観光など、多様な産業が集まっています。
一方で、人口減少や高齢化の影響を受け、首都圏においても人材確保は企業の大きな課題になっています。特に、物流、工場、介護、外食、建設などの現場では、日本人だけで必要な人材を継続的に確保することが難しくなっている企業もあります。
このような状況の中、外国人材は単に不足する人数を補う存在ではなく、事業を継続し、将来の現場を支える人材として採用されるようになっています。
本記事では、関東地方全体ではなく、外国人労働者数や産業構造を踏まえ、東京、埼玉、千葉、神奈川、茨城の主要5都県に対象を絞って、それぞれの特徴と採用の考え方を整理します。
主要5都県に110万人を超える外国人労働者
2025年10月末時点で、日本国内の外国人労働者数は257万1,037人となっています。
主要5都県の外国人労働者数は、東京都が65万2,251人、神奈川県が14万8,888人、埼玉県が13万3,049人、千葉県が10万5,829人、茨城県が6万7,500人です。
5都県を合計すると110万7,517人となり、全国の外国人労働者のおよそ43%がこの地域に集中しています。
| 地域 | 外国人労働者数 | 主な産業上の特徴 |
|---|---|---|
| 東京都 | 652,251人 | IT、情報通信、サービス、国際業務 |
| 神奈川県 | 148,888人 | 製造、IT、研究開発、サービス |
| 埼玉県 | 133,049人 | 製造、物流、食品加工 |
| 千葉県 | 105,829人 | 物流、食品、製造、介護、農業 |
| 茨城県 | 67,500人 | 製造、農業、食品加工、研究開発 |
ただし、外国人労働者数が多いことと、新たな採用需要が高いことは同じではありません。
現在働いている人数は、その地域に外国人材を受け入れる企業や産業がどの程度存在するかを知るための指標です。実際の採用では、地域だけでなく、業種、職種、在留資格、必要な経験や日本語力を個別に確認する必要があります。
地域によって異なる採用市場
東京都―専門人材をめぐる競争が強い市場
東京都には、IT、情報通信、貿易、海外営業、ホテル、飲食、介護など、幅広い仕事があります。
外国人材の選択肢が多い一方、企業側から見ると、同じ人材を複数の企業が採用しようとする競争の強い地域でもあります。
特にITエンジニアや国際業務に関わる人材を採用する場合、求人を出すだけでは十分ではありません。給与や仕事内容に加え、どのような技術を身につけられるか、将来どのような仕事を任されるかを明確にすることが重要です。
東京都では、外国人労働者に占める情報通信業の割合が比較的高く、他の4県とは異なる産業構造が見られます。
埼玉県―製造と物流を支える人材市場
埼玉県では、自動車部品、機械加工、食品製造、倉庫、物流などの産業が発達しています。
外国人労働者のうち、製造業で働く人の割合は約28.6%です。工場での作業だけでなく、機械加工、品質検査、生産管理、CAD補助など、一定の経験や技術を必要とする仕事もあります。
採用時には、製造業での経験があるかどうかだけでなく、使用した機械、担当工程、図面を読む能力、品質管理の経験などを具体的に確認することが必要です。
千葉県―物流、食品、介護など多様な需要
千葉県には、成田空港、東京湾岸の物流拠点、食品工場、農業地域などがあります。
外国人労働者に占める製造業の割合は約21.8%ですが、物流、食品加工、介護、農業などにも仕事が分散していることが千葉県の特徴です。
東京へのアクセスが比較的良く、働く場所と生活する場所の選択肢がある一方、企業は東京都内の求人とも比較されます。そのため、給与だけでなく、通勤、住居、勤務時間、教育体制などを含めて採用条件を説明することが重要になります。
神奈川県―製造技術とITが共存する市場
神奈川県には、横浜、川崎、厚木などの産業拠点があり、自動車、機械、電気、IT、研究開発などの分野が集まっています。
外国人労働者のうち、製造業で働く人の割合は約21.3%です。製造現場の人材だけでなく、機械技術者、電気技術者、システムエンジニアなど、専門的な知識を必要とする仕事もあります。
同じ「技術者」という募集でも、実際の業務内容は企業ごとに異なります。採用する企業は、学歴や職歴だけを見るのではなく、担当させる仕事と本人の経験が一致しているかを確認する必要があります。
茨城県―製造、農業、食品を中心とする市場
茨城県では、製造業、農業、食品加工、研究開発などが地域経済を支えています。
外国人労働者に占める製造業の割合は約35.6%で、主要5都県の中でも製造業の比重が高い地域です。
工場作業や食品製造などの現場では外国人材がすでに働いていますが、将来的には、作業を担当するだけでなく、品質、安全、工程、新人教育などに関わる人材を育成できるかが課題になります。
すべての人材が管理者を目指す必要はありません。しかし、本人の経験や適性に応じて担当できる仕事を増やすことは、企業にとっても長期的な人材確保につながります。
ベトナム人材を国籍だけで判断しない
2025年10月末時点で、日本で働くベトナム人は60万5,906人で、外国人労働者全体の23.6%を占めています。
全国の産業別構成を見ると、ベトナム人労働者の約37.5%が製造業、約14.3%が建設業、約11.8%が卸売業・小売業で働いています。
この構成から、製造業が集まる埼玉、千葉、神奈川、茨城では、ベトナム人材の経験を生かせる可能性があります。また、東京や神奈川では、ITや国際業務などで専門性を持つ人材を採用できる可能性もあります。
ただし、「ベトナム人だから製造業に向いている」「外国人だから現場作業を任せる」と判断することは適切ではありません。
採用で確認すべきなのは国籍ではなく、本人がこれまで担当してきた仕事、身につけた技術、日本語力、在留資格、希望するキャリアと、企業が求める条件が合っているかどうかです。
採用前から定着までを一つの流れで考える
外国人材の採用では、応募者を集めることだけに集中すると、入社後に仕事内容や条件の認識がずれる可能性があります。
まず企業側が、担当させる仕事内容、必要な経験、日本語力、勤務条件を明確にする必要があります。その上で、その仕事が本人の在留資格で認められる活動に該当するかを確認します。
採用後には、業務上必要な日本語、安全教育、報告・連絡・相談の方法、社内ルールなどを伝えることも必要です。
日本の職場文化を一方的に教えるのではなく、「どのような場面で、なぜその対応が必要なのか」を具体的に説明した方が、本人も理解しやすくなります。
また、外国人材が求めているものは、必ずしも安定だけではありません。どのような経験を積めるか、将来どこまで担当範囲を広げられるかが見えなければ、長く働く判断をすることは難しくなります。
採用基準、仕事内容、教育、評価、将来の役割をつなげて考えることが、外国人材の定着と企業内での成長につながります。
2030年に向けた人材需要の見通し
今後、人口減少が進む中で、企業間の人材獲得競争はさらに強まる可能性があります。
特に関東圏では、IT、介護、製造、物流、食品などの分野で、外国人材の採用と育成が引き続き重要になると考えられます。
| 分野 | 2030年に向けた需要の見通し |
|---|---|
| IT人材 | ★★★★★ |
| 介護人材 | ★★★★★ |
| 製造技術者 | ★★★★★ |
| 物流人材 | ★★★★★ |
| 食品分野の人材 | ★★★★☆ |
※本表は公的機関による公式な将来予測ではありません。FirstStepがこれまでの採用支援、企業からの相談、産業構造や市場動向を踏まえて整理した、各分野の相対的な見通しです。実際の需要は、景気、制度、自動化、地域や職種などの条件によって変化します。
人材不足が続くからといって、外国人材を採用すれば問題が解決するわけではありません。
企業側に受け入れと育成の準備がなければ、採用できても長期的な戦力にはつながりにくくなります。一方、仕事内容と採用条件を整理し、入社後に経験を積める環境を用意できれば、外国人材が現場を支える期間や担当できる役割は広がります。
地域と仕事に合った採用戦略が必要になる
東京、埼玉、千葉、神奈川、茨城は、いずれも多くの外国人材が働く地域ですが、産業構造や求められる職種は同じではありません。
東京ではITや国際業務を含む専門人材の獲得競争が強く、埼玉と茨城では製造業の比重が高くなっています。千葉では物流、食品、介護、農業など仕事が多様で、神奈川では製造技術とITの両方に可能性があります。
企業に必要なのは、「外国人を採用する」という大きな方針だけではありません。
どの地域で、どの仕事を、どのような経験を持つ人に任せるのか。その人材を入社後にどのように育成し、どのような役割につなげるのか。そこまで具体的に整理することが、採用のミスマッチを減らし、長期的な人材確保につながります。