― 外国人社員が長く働き続けられる「安心感」とは
ある外資系サービス企業での事例です。
期待を持って始まった採用だった
この企業は、日本市場での事業拡大を見据え、外国人採用にも積極的に取り組んでいました。単に人手不足を補うためではなく、長期的に活躍できる人材を育成し、ともに事業を成長させていくという考えを持っていました。
FirstStepを通じて、3名のベトナム人材を紹介しました。応募した方々はいずれも若く、日本で経験を積みながら成長したい、自分の力を発揮し、長く働きたいという思いを持っていました。
企業側も、外国人材を単なる採用対象としてではなく、教育や育成を通じて一緒に日本市場を広げていく仲間として迎えようとしていました。採用当初は、企業と人材の方向性が自然につながっているように見え、長期的な定着につながる可能性を感じられるスタートでした。
評価され、将来も見えていた
そのうちの一人は、すでに実務経験を持つ女性社員でした。
入社後は環境への適応も早く、自ら仕事を引き受けながら周囲との信頼関係を築き、着実に成果を出していきました。その結果、入社初年度には社内でも高く評価される存在となりました。
本人も会社に対して前向きな印象を持ち、このまま長く働いていきたいという気持ちを持っていました。企業側から見ても、本人から見ても、将来的に中心的な存在として活躍していくことを期待できるケースでした。
しかし、その後、同業他社から声がかかったタイミングで、彼女は転職を選択しました。
理由は、仕事内容への不満でも、本人の評価への不満でもありませんでした。
働く中で、周囲の社員が強いプレッシャーを受けている場面を見る機会があったそうです。成果に対する責任が個人に大きく集中しているように感じたり、在留資格やビザに関する不安が、働く上で心理的な負担として存在しているように見えたりする場面もありました。
本人自身がその状況に置かれていたわけではありません。ただ、その様子を見ながら、「もし将来自分が同じ立場になったとき、この会社で安心して働き続けられるだろうか」と考えるようになったといいます。
結果として、本人はより安心して長期的に働けると感じた環境へ移る決断をしました。
長く働いてもらうために必要なのは、評価だけではない
この事例は、外国人社員だから特別という話ではありません。
一方で、日本で働く外国人材にとって、仕事は将来の生活や在留資格とも結びついていることが多く、働く環境や組織への信頼は、定着を考える上で無視できない要素になります。
今回のケースでは、能力があり、会社への期待もあり、本人も長く働きたいと思っていました。それでも離職につながった背景には、現在の待遇や評価だけでは説明できない、「将来も安心して働き続けられるか」という感覚がありました。
企業が外国人採用を長期的な取り組みとして考えるのであれば、採用後にどのように育成するかだけではなく、困ったときにどう支えるか、組織としてどのように人と向き合うかも重要になります。
安心感は制度だけで生まれるものではありません。日々の関わり方や、周囲への向き合い方の積み重ねによって形成されるものなのかもしれません。
FirstStepとして考えていること
FirstStepは、外国人材を紹介すること自体を目的にしていません。
採用後に本人が安心して力を発揮し、企業とともに長く成長していける状態を目指しています。そのため、採用時だけではなく、入社後の状況や変化にも目を向けながら支援を続けています。
一方で、実際の職場環境や評価制度、日々のマネジメントそのものを外部が変えることはできません。
今回のケースは、採用そのものが成功していても、それだけでは長期定着につながらないことを改めて考えさせられる事例でした。長く働いてもらうために必要なのは、能力の評価だけではなく、将来に対して安心して働き続けられる環境をどう作るかという視点なのかもしれません。