なぜ外国人採用になったのか
今回ご紹介するのは、電気設備向け機械を製造している中規模機械メーカーの事例である。
この会社では以前から日本人採用を優先していた。しかし、採用活動を続けても給与条件が合わず辞退されるケースや、入社後に仕事内容が想像より厳しかったため短期間で退職するケースが続いていた。
現場では一定の体力、継続力、現場適応力が求められるため、採用自体が簡単ではない職種だった。そのため、会社は採用対象を外国人にも広げ、ベトナムを中心として複数国から採用を実施した。これまで累計で約10名近く採用を行ったが、現在継続して勤務しているのは3名となっている。
この結果だけを見ると、「外国人は定着しない」「外国人は仕事を続けることが難しい」という印象を持たれることがある。
しかし今回のケースでは、その見方だけでは現場で起きている実態を十分説明できない。
そもそも、この会社が外国人採用を始めた背景には、日本人採用そのものの難しさが存在していた。つまり、外国人だから課題が起きたのではなく、もともと定着が容易ではない職種だったという前提を忘れてはいけない。
定着しなかった理由は何だったのか
実際に現場を振り返ると、退職理由は単純ではなかった。
仕事そのものとの適性
一つ目は、仕事そのものとの適性である。仕事内容は比較的体力を使い、作業強度も高い。入社直後は問題なく働けても、数か月継続する中で疲労回復が追いつかず、想像していた働き方との差を感じるケースがあった。
こうした要素は、面接だけでは完全に見極めることが難しい。企業側も本人側も、実際に働いて初めて見えてくる部分がある。
生活環境への適応
二つ目は、生活環境への適応である。会社の立地は都市部から距離があり、特に来日して間もない外国人にとっては、仕事以外で交流したり気分転換したりする機会を作りにくい環境だった。
慣れない生活の中で、仕事の疲労に加え、生活上の孤立感が重なると、少しずつ精神的な余裕を失い、継続意欲が下がっていくケースも見られた。
このような状況は、国籍だけで説明できるものではない。仕事内容、生活環境、本人の適性、期待とのギャップなど、複数の要素が重なって初めて結果として表れている。
対話を増やすことで見えてきたこと
一方で、全員が同じ結果になったわけではない。
会社側は定期的に面談を行い、仕事や生活面の状況を継続的に確認していた。また、FirstStepも間に入り、本人と会社双方の状況を整理しながら対話を支援していた。
ここで重要だったのは、誰かが代わりに問題を解決することではなく、違和感や困りごとを早い段階で言葉にできる環境を作ることだった。
外国人雇用では、言語だけでなく、期待していることの伝え方や相談の仕方にも差が生まれることがある。そのため、双方の背景や考え方を理解する第三者が入ることで、会社側の意図と本人の受け止め方のズレが整理され、対話しやすくなる場面もあった。
もちろん、対話した結果として退職を選ぶケースもある。しかし、「誤解したまま辞める」「限界まで我慢して突然辞める」といった状況を減らすことには意味がある。
今回伝えたいのは、最終的に何人残ったかという結果だけではない。
現在、多くの製造・加工現場では、採用後の定着に課題を抱えている。だからこそ、原因を単純に国籍や文化へ求めるのではなく、仕事内容、生活環境、採用条件、そして対話の仕組みまで含めて見直していく必要がある。
採用して終わりではなく、働き始めてから生まれる小さな違和感を早く見つけ、会社と働く人が一緒に調整していくことが、結果として長期雇用と採用損失の低減につながるのではないだろうか。