育児支援制度は、働く人を支えるための大切な仕組み
日本では、出産・育児と仕事を両立できるよう、産前産後休業や育児休業など、さまざまな制度が整備されています。また、保育園に入園できない場合など一定の条件を満たせば、育児休業を延長できる仕組みも用意されています。
これらの制度は、安心して子どもを産み育てられる社会を実現するための重要な制度であり、従業員が利用することは当然の権利です。
一方で、制度そのものに問題がなくても、実際の現場では企業が対応に悩むケースも少なくありません。
現場で実際に起きた一つのケース
ある企業では、外国人社員を採用して約半年後、その社員が結婚・妊娠し、産前産後休業に入りました。その後は育児休業を取得しましたが、保育園へ入園できなかったため、育児休業を延長することになりました。
企業としては復職時期を見据えて準備を進めていましたが、復職前に第二子の妊娠が分かり、再び産前産後休業・育児休業へ入ることになりました。
結果として、採用から数年が経過しても十分に業務へ復帰できる期間がほとんどなく、企業側としては「いつ復職できるのか」を見通すことが難しい状況となりました。
もちろん、この従業員は制度を適切に利用しているだけであり、何ら問題があるわけではありません。しかし、企業側にとっては人員計画を立てにくいという現実があります。
従業員側から見れば当然の権利
このケースを従業員側から見れば、本人に非があるとは言えません。
出産のタイミングや家族計画は各家庭の事情によるものであり、保育園へ予定どおり入園できるかどうかも本人だけではコントロールできません。将来のライフプランが予定どおりに進まないことも珍しくありません。
特に外国人社員の場合、日本の制度を十分に理解していないケースもあります。そのため、妊娠や出産を迎えた際には、勤務先だけでなく、市区町村役場などの公的機関へ相談し、利用できる制度や必要な手続きを早めに確認することが重要です。
企業側が抱える現実的な課題
一方、企業にとっては別の課題があります。
長期間にわたって人員が不足する場合、代替要員を採用すべきか、既存メンバーで業務を分担するべきかを判断しなければなりません。代替要員を採用すれば採用・教育コストが発生し、採用しなければ現場の負担が増える可能性があります。
さらに難しいのは、復職時期を正確に見通せないことです。保育園への入園状況や家族の事情によって予定が変わることもあり、企業として長期的な人員計画を立てにくくなります。
つまり、このケースの本質は「育児休業制度」ではなく、「将来の見通しが立てにくい中で人員計画をどう設計するか」という経営・人事上の課題にあります。
面接で家族計画を聞けば解決するのだろうか
こうしたケースを見ると、「採用面接で結婚や出産の予定を確認した方がよいのではないか」と考える企業もあるかもしれません。
しかし、日本では採用における公平性や男女平等が重視されており、結婚予定や妊娠・出産に関する質問は、状況によっては応募者に不利益を与える質問と受け取られる可能性があります。
そのため、採用時に将来を予測しようとするよりも、このようなケースが起こり得ることを前提として、人員配置や業務の引き継ぎ体制、代替要員の確保など、柔軟に対応できる仕組みを整備していくことの方が現実的ではないでしょうか。
制度を理解し、双方が安心して働ける環境へ
出産・育児支援制度は、働く人を守るために欠かせない制度です。一方で、企業には事業を継続し、顧客への責任を果たす役割もあります。
だからこそ、この問題を「企業が悪い」「従業員が悪い」という二項対立で考えるのではなく、双方の立場を理解した上で、より良い職場環境をどのように構築していくかが重要になります。
外国人採用では、採用そのものだけでなく、入社後のライフイベントまで見据えた支援体制やコミュニケーションも、長期的な定着につながる大切な要素の一つと言えるでしょう。