外国人採用を検討する際、多くの企業が最初に気にするのは「応募者の日本語力は十分か」という点かもしれない。
もちろん、日本語力は重要である。特に測量のように現場での連携や報告が重要な仕事では、言葉による認識のズレが業務効率や品質に影響することもある。
しかし実際の採用現場では、日本語力だけでは判断しきれない場面も少なくない。
今回紹介するのは、中規模の測量会社での事例である。
採用を進める中で見えてきた現実
この会社では、若手日本人の採用が年々難しくなっており、特に夜間測量にも対応できる人材の確保が課題になっていた。そこでFirstStepとして外国人人材の紹介を行い、4名の応募者が面接に進んだ。
結果は想定していたよりも単純ではなかった。
日本語力が高く評価された応募者は、夜勤比率が想定より高いことを理由に入社を見送った。一方で、働く意欲は高かったものの、業務上必要な日本語レベルに届かず選考に進めなかった応募者もいた。
そして4人目の応募者で、新しい課題が見えてきた。
その応募者は条件面では十分に合致しており、社長からの評価も高かった。しかし現場社員の中には、不安の声があった。
「本当に現場で意思疎通できるのか」
「説明や引き継ぎに時間がかからないか」
「夜間作業で認識違いが起きないか」
こうした反応は、必ずしも外国人だから生まれたものではない。
現場業務では、実際に一緒に働く社員が業務品質や安全性を支えている。だからこそ、現場から見れば、新しい働き方やコミュニケーション方法に対して慎重になるのは自然なことである。
そこでFirstStepとしては、「問題ないので受け入れてください」と説得する方向ではなく、実際に一緒に働く時間を設け、お互いに理解を深める方法を提案した。
社長はこの考え方を受け入れ、追加で1日間の職場体験を実施することを決定した。
この1日は、応募者を試すためだけの時間ではない。
職場体験による相互理解
現場社員にとっては、外国人スタッフと実際にどのようにやり取りするのか、業務上どの程度コミュニケーションできるのかを確認する機会であり、応募者にとっても、仕事の進め方や報告・相談の文化を理解する機会である。
実際に同じ環境で時間を過ごすことで、それまで想像だけだった不安や期待が、具体的な判断材料へと変わっていく。
採用とは、企業が人を選ぶだけではない。 応募者もまた、自分が働く環境を選んでいる。そして受け入れる側の組織も、新しいメンバーとどのように働くかを学んでいく必要がある。
仕事のコミュニケーションは日本語力だけでは決まらない
今回のケースを通じて改めて感じたのは、仕事におけるコミュニケーションは日本語力だけでは決まらないということである。
もちろん、日本語力は重要な要素である。
しかし、業務の成果に直結するのは、日本語の流暢さそのものだけではない。目的を理解できるか、状況を論理的に整理できるか、必要なタイミングで報告・確認できるか、相手と認識を合わせられるかといった要素も同じくらい重要になる。
そのため、実際の現場ではコミュニケーションを会話だけに依存しない工夫が行われることもある。
- 業務フローの明確化
- チャットの活用
- 図解による共有
- チェックリストの整備
- 報告ルールの整理
こうした仕組みによって、言葉の差があっても認識を合わせやすくなるケースは少なくない。
だからこそ、採用が難しくなっている今、企業に求められるのは「日本語が完璧な人を探すこと」だけではなく、「どこまでを言語で解決し、どこからを仕組みで支えるか」を考えることなのかもしれない。
そしてもう一つ重要なのは、外国人採用を始める際に、現場社員へ「自分たちで何とか活用してほしい」と任せきりにしないことである。
受け入れを成功させるためには、説明方法、育成方針、相談環境、試行の機会など、企業側の準備や支援も必要になる。
外国人採用で最初に準備するべきなのは、応募者だけではない。
一緒に働く組織側の準備もまた、同じくらい重要なのである。