外国人の活躍|第7回 外国人採用で見落とされやすい「働き続けられる環境」とは

2026/06/22
外国人採用で見落とされやすい働き続けられる環境

ある外資系サービス企業に対して、FirstStepはこれまで3名のベトナム人材を紹介した。そのうちの1名のケースは、今でも強く印象に残っている。

本人の給与水準は決して高くなく、生活面にも余裕がなかったため、職場の近くへ引っ越すことが難しい状況だった。それでも、毎日片道約2時間かけて通勤し、残業にも対応しながら、一度も遅刻せず出勤を続けていた。

試用期間中は成果を出そうと努力し、本採用後もさらに期待に応えようと働き続けていた。しかし、入社から1年以上が経過した後、本人は退職を決断した。

理由は、仕事そのものが難しかったからではなかった。

成果への要求が、人への圧力になっていないか

本人から共有された理由のひとつは、職場でのマネジメントのあり方だった。

会社の期待した計画に届かない場合、朝礼でチーム全体が呼び出され、強い口調で指摘されることが繰り返されていたという。

企業が目標を設定し、成果を求めること自体は当然のことである。事業として結果を追う以上、評価や改善要求は必要になる。

一方で、現場運営においては、成果責任と成果を生み出す条件は切り離して考えられるものではない。

目標設定の背景や評価基準が十分に共有されず、達成可能性の説明もないまま結果だけが求められる状況が続くと、社員は「期待されている」のではなく、「責任だけを負わされている」と感じ始めることがある。

特に外国人社員の場合、言語、生活基盤、人間関係、相談先など、多くの要素が日本人社員より限定されることも少なくない。同じマネジメント手法であっても、受け取り方や心理的負荷が大きく異なる可能性がある。

ここで重要なのは、成果要求を下げることではない。成果を求めるのであれば、その前提条件や改善方法も含めて対話できる状態を作れているかという点である。

外国人社員にとって在留資格は単なる手続きではない

外国人社員にとって、在留資格は単なる手続きではない

もうひとつ本人が退職理由として挙げたのは、在留資格更新に関する対応だった。

本人からの共有によると、在留資格更新の時期が近づいていたにもかかわらず、申請に必要な会社側の書類準備が進まず、手続きを開始できない状況が続いていたという。

また、その過程の中で、本人は在留資格に関する対応そのものが、働く上での心理的な圧力になっていると感じるようになっていった。

ここで重要なのは、実際に更新が認められたかどうかだけではない。

企業が在留資格更新を代行する責任を常に負うわけではない。一方で、実務上は会社側の証明書類や社内対応がなければ進められない場面も多い。

外国人社員にとって、在留資格は単なる事務手続きではない。日本で生活し、働き続けるための前提条件であり、その不安は仕事以外の生活全体にも影響する。

そのため、必要書類の提供が遅れる、進捗が共有されない、先が見えない状態が続くと、社員側は「働く評価」と「在留の安定」が結びついているように感じることがある。

もちろん、実務上さまざまな事情で対応が遅れることはあり得る。だからこそ、早めに説明し、進捗を共有し、必要な準備について対話すること自体が、外国人社員に対する重要な支援になる。

本当に見直すべきなのは採用力なのか

本当に見直すべきなのは、採用力なのか

FirstStepが考えさせられたのは、1人の退職そのものではない。むしろ、採用、育成、定着まで含めた全体設計だった。

採用コスト、教育コスト、売上貢献までの人件費、既存社員の支援工数。これらはすべて企業にとって実際に発生している投資である。

もし、十分に努力している社員であっても、成果が出る前の段階で離職が繰り返されるのであれば、見直すべき対象は採用基準だけではないかもしれない。

今の環境は、本来発揮できる力を引き出せる状態になっているのか。

期待している成果と、社員が置かれている条件は整合しているのか。

そして、離職コストまで含めて、本当に合理的な運営になっているのか。

こうした問いを持つこと自体が、長期的な採用力や組織づくりにつながる可能性がある。

外国人社員を尊重することは、特別扱いをすることではない。話を聞くこと、状況を共有すること、必要な情報を早めに伝えること。

そうした基本的な対話だけで解決できる問題は、想像以上に多い。

高い基準を持つことと、安心して働ける環境を作ることは、必ずしも対立するものではない。

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