同じ退職でも、その後の条件は同じではない
近年、退職代行サービスを通じて突然退職を伝えられ、対応に戸惑った経験を持つ企業も少なくないのではないでしょうか。
私自身、前日まで普段どおりに笑って話していた営業社員から、翌日になって第三者を通じて退職の連絡を受け、驚いたことがあります。
ただし、ここで退職代行サービスや退職する人を批判したいわけではありません。
考えたいのは、同じように会社を辞める場合でも、日本人と就労資格を持つ外国人では、その後に置かれる条件が必ずしも同じではないということです。
外国人も、雇用保険の加入条件を満たしていれば、日本人と同じように基本手当を受けることができます。外国人だから失業給付を受けられないわけではありません。
一方で、外国人の場合、失業期間は収入だけの問題では終わりません。
就労系の在留資格を持つ人は、現在の資格で認められている活動に該当する仕事を探す必要があります。退職後、在留資格に該当する活動を三か月以上行っていないことは、在留資格取消しの対象として検討される可能性があります。
もちろん、三か月が経過すれば在留資格が自動的に取り消されるわけではありません。継続的に就職活動を行っているなど、正当な理由がある場合は、その事情も考慮されます。
しかし、制度上すぐに在留資格を失うわけではないとしても、本人が感じる時間的な余裕は、日本人と同じとは限りません。
生活費や家賃を負担しながら、自分の経験や専門性だけでなく、在留資格にも適合する仕事を探さなければならないからです。職歴や業務内容についても、将来の在留資格申請を考えれば、事実と異なる説明をすることには大きなリスクがあります。
同じ失業給付を受けられる立場であっても、その期間をどれほど安心して再就職の準備に使えるかには、客観的な違いがあります。
現場経験を積んでから設計へ進むことの難しさ
日本企業では、入社時の専攻や経験にかかわらず、まず現場を経験し、製品、設備、作業工程や品質基準を理解した後に、設計や管理などの業務へ進む育成方法があります。
特に製造業や建設業などでは、実際の現場を知らなければ判断しにくいこともあります。新しく入社した社員が、会社独自の製品や業務の進め方を理解するまでに時間を必要とするのは、外国人に限ったことではありません。
しかし、外国人エンジニアを同じように育成しようとすると、企業は在留資格との関係も考えなければなりません。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では、専門的な知識を必要とする業務に従事することが前提になります。そのため、現場での作業が長期間に及んだり、専門業務との関係を説明しにくかったりすると、単純労働が主な仕事であると判断されるリスクがあります。
一方、現場での実務研修がすべて認められないわけではありません。入社後の研修の一部であり、その後に担当する専門業務との関係、研修の目的、内容、期間などを合理的に説明できれば、認められる場合があります。出入国在留管理庁も、「技術・人文知識・国際業務」で許容される実務研修について考え方を示しています。
つまり、原則としては、外国人エンジニアにも現場経験を含む育成の道を設けることは可能です。
ただ、実際の申請や更新では、個別の業務内容や研修計画を具体的に説明しなければなりません。現場業務の割合が高い場合や、専門業務へ移行する時期が明確でない場合、企業側が在留資格上のリスクを感じるのも無理はありません。
現在、現場研修を含む申請の許可率を示す公的な統計は確認できません。そのため、「最近はほとんど許可されない」と断定することはできません。
しかし、審査結果を確実に予測できない以上、企業が安全を優先し、外国人エンジニアに最初から設計や専門性の高いデスクワークを求める傾向は、実務上起こり得ます。
その結果、外国人エンジニアは、現場を通して会社の製品や技術を学ぶ機会が十分にないまま、早い段階から専門業務の成果を求められることになります。
必要なのは特別扱いではなく、成長できる道筋
外国人エンジニアに事情があるからといって、採用基準や仕事の評価を下げる必要はありません。
企業に求められるのは、外国人を特別扱いすることではなく、日本人社員と同じ育成方法をそのまま当てはめることが難しい場合があると理解することです。
採用した外国人エンジニアに現場知識が必要であれば、在留資格との整合性を確認したうえで、研修の目的、期間、その後に担当する専門業務を明確にする必要があります。
必要に応じて、次のような形で段階的に経験を積ませる方法も考えられます。
- 現場見学
- 専門社員への同行
- 製造工程の学習
- 設計補助
いずれの場合も、専門業務との関係を説明しやすい形で実施することが重要です。
また、本人がまだ日本の業務環境や会社独自の技術に慣れていない段階で、すぐに一人前の設計や判断を求めるのではなく、どのような知識と経験を、どの順番で身につけてもらうのかを企業側も整理することが重要です。
外国人エンジニアは、仕事を辞めた後も、在留資格、再就職、生活の維持を同時に考えなければなりません。入社後も、現場経験と専門業務の間にある在留資格上の制約によって、成長の機会が狭くなることがあります。
こうした条件を理解することは、外国人を優遇することではありません。
企業が採用した人材に長く活躍してもらうために、在留資格に適合しながら経験を積める道筋を準備することです。
外国人エンジニアが持つ専門性を日本で生かしてもらうためにも、結果だけを急いで求めるのではなく、能力を発揮するまでの過程にも、もう少し目を向ける必要があるのではないでしょうか。